コロナの入院給付金、支払い対象者の見直し

コロナの入院給付金

コロナ入院給付金

生命保険協会は、今年の生保各社の医療保険入院給付金支払い総額が、6月末までに約2893億円に達し、昨年1年間の支払い額のすでに4.6倍にあたる金額になっていることを発表した。
このうち9割、2650億円が無症状者をふくめた「みなし入院」感染者からの請求だった。
現行の保険制度では、軽症や無症状でも保健所の療養証明書があれば、医療保険の入院給付金を受け取ることができる。感染者の急増で病床があふれ、医療機関が逼迫する事態を防ぐため、自宅や自治体が指定するホテルで療養している人を実際の入院と同等に扱う「みなし入院」と呼ぶ措置を講じているためだ。
コロナ感染者になって、10日間の自宅療養を行えば、自宅療養でも入院給付金、入院一時金、特定感染症診断一時金と合計50万円も出るケースもあるという。
もちろん、これは新型コロナが第2類相当という扱いになっているためだ。
第7波で軽症や無症状の感染者が大半を占めるようになり、保険金目当ての検査が増えているという噂もある。給付金の受け取りを目的に、感染の疑いが出てから保険加入を申し込む事例もあるという。

もっとも民間の保険だから、加入者も保険料を支払っているわけで、実際に陽性になれば10日間、出社できないわけだから、その間、身体を休めつつ、コロナ保険で数十万円頂くこととの損得計算をした上での申請であろう。

 

入院給付金対象の見直し

軽症や無症状の感染者への支給が急増していること、また支払業務にあたる人員のやり繰りなど業務面の負担も重くなっている、そして感染症第7波の請求が秋以降に本格化すれば、支払額はさらに膨らみ、業績への影響も無視できなくなってきている。

このため日本生命保険や第一生命保険の大手生命保険会社は入院給付金対象者を見直す検討に入った。早ければ9月下旬から新たな基準を適用し、対象を65歳以上の高齢者や妊婦など重症化の恐れが高い場合に限定する。

新たな基準になれば、入院給付金を受け取れる対象者はこれまでより7割前後減る見通しだという。

日本は「衰退途上国」?

感染者の急増で医療機関が逼迫する事態への根本的な対策を怠って来たこと、その結果が、「みなし入院」措置を講じることになった経緯を顧みれば、今回の対象見直しは誠に場当たり的弥縫策の対応でありすっきりしない。
我が国は何事においても将来を予測・検討して必要な対応策・解決策を講じようとしないで、小手先の解決を図るやり方で対処してきている。これで先進国と言えるのだろうか?
今年5月に行われた日本経済学会春季大会のパネル討論で、パネリストの一人が日本は低い成長率を続けて世界から取り残されていく「衰退途上国」になってしまったと指摘したそうだ。
今日の対外的な大きなショックがあっても、企業の90%余を占める中小・零細企業は、価格転嫁すれば製品が売れなくなって倒産しかねないと、値上げをおこなわない。そのツケは結局賃金の抑制になってしまい、「衰退途上国」から脱却できない状況が継続していくことになる。

どのようにして、「衰退途上国」から脱却するのかに関して、当該日本経済学会は「ワイズスペンディング」が必要だということと、積極財政では成長率は高まらないということを指摘している。

人的資本

「人的資本」が今はやりのキーワードになっている。

多くの大企業が人的資本を高めようと、社員のリスキリングに取り組み始めているが、解決すべきは中小企業の雇用をどうするかということだ。

岸田文雄首相が掲げる「人への投資」がワイズスペンディングになるのだろうか?

政府が打ち出す具体的政策を注意深く見守っていこう。