日本の医療体制と機敏な統治

高齢者女性に話しかける男性スタッフ

 

新型コロナウイルスの2月6日の新規感染者は全国で約8万9000人で、6日連続で8万人超となった。東京都は日曜日としては最多の1万7526人で、大阪府も1万3325人に上った。感染拡大に歯止めがかからない状況が続いている。

コロナ禍で既に2年もたつが、医療体制は一向に改善されず、入院もできずに自宅療養するしかない感染者が増加している。コロナ危機にきちんと対応できない情けない現状は、なんとかしなければならないと考える。

医院のほとんどを占める小規模経営の医院は「医は仁術」ならぬ「医は算術」に走り、他人を思いやる利他のココロ・精神が忘れられていて、誉められない有様と思えてならない。

コロナ医療体制、社会保障制度改革など直ぐにも取り組まねばならぬ重要な課題は山積している。

この国の弱点である「決められない」「先延ばしにする」体質を危機の今こそ改めて、真剣に取り組む必要があると愚考する。

スピード感にかける政治・行政に対する改善策としては、日本経済新聞2月1日電子版に紹介されている台湾やインドにおけるアジャイルガバナンス(機敏な統治)の事例が大いに参考になると思う。

台湾では行政院のサイト「公共政策オンライン参加」を通じて年齢に関係なく市民が独自の政策アイデアを投稿できる。5000人の賛同を得た提案は省庁の会議で実際に議論され、これまでに治験ルールの緩和によるがん免疫療法の新薬早期投与などを実現した。

ITを駆使したアジャイルガバナンスの仕組みは迅速で無駄を省いた執行にも効果を発揮した。インド政府は新型コロナウイルス対策の大規模都市封鎖に踏み切った20年春、わずか1カ月足らずで1.6億人以上を対象に3665億ルピー(約5600億円)の直接現金給付を実現した。

給付のプラットフォームとなったのはインド版マイナンバー制度「アーダール」。個人情報の流出トラブルなどを起こしながらも機能の追加・改善や法整備を続けた約10年の努力が実を結んだ。

引用元:日本経済新聞2月1日電子版

政府と市民の連携や意思疎通を通じて、迅速に民意を吸い上げ実行することこそ、危機に瀕する日本の現状に活路を与えると考える。日本政府・関係省庁は是非ともITを駆使して迅速な政策実行がなされるよう知恵を出してもらいたい。

マイナンバー健康保険証

マイナンバー健康保険証

日本が先進国とは言えない一つの事例として、マイナンバー健康保険証を取り上げ考察する。

 

政府広報ー健康保険証の運用

政府広報オンラインにて、「マイナンバーカードはすべての人の暮らしを便利にするためのカード」と広報を行い、2021年3月から、健康保険証として使えるようになるとうたっている。

ところが、使えるようにする制度改革が計画よりも遅れている。やっと厚生労働省はシステムの構築を終え、10月20日から運用を始める予定だが、実施は間違いなく延期されるだろう。

 

医療機関側のシステム対応

一方、医療機関側のシステム対応も進んでいない。カードリーダーの導入など、準備が整った病院や診療所、薬局はたったの5.6%しかない。

これでは大半の医療機関でマイナ保険証は利用できない状態だ。

マイナンバーカードの交付率は現時点で、人口の4割弱にとどまっている(何でまだその程度なのか?)。保険証として登録されたのは交付済みカードの1割しかない。

政府が補助金も用意してシステム対応を呼びかけているにも関わらず、医療機関の動きは鈍い。

何故なら、病院の2割強、診療所の5割強は、国が配布する顔認証付きカードリーダーを申し込んでもいない状況だからだ。

対応を見送っている医療機関からは、交付率が低いから、マイナ保険証を使いたいという患者ニーズが出てきたら考えるとの声が出ているという。

 

マイナ保険証実施への対応策

マイナ保険証

出典:マイナポータル

マイナ保険証を実施すると決めたのだから、それに対応するかどうかを病院や薬局の判断に委ねるのではなく、当局(内閣府、総務省、厚生労働省)は医療機関に期限を定めて対応を義務付けるべきだ。

 

マイナ保険証に期待する効果

マイナ保険証に期待する効果は患者の利便性向上だけではない。服薬履歴などデータを見たうえで診察や処方をすることで、重複処方を防ぐことも期待される。

年々増加している医療費の抑制につながる効果は計り知れない。デジタル技術を使った医療の効率化に協力することは、公的な医療保険から収入を得ている病院や診療所、薬局の責務だ。

また、国民は国が定めたことにはすぐに対応して、国の政策には積極的に従い、協力する義務があると考える。

 

関係官庁及び国民への要望

国は強制力を発揮してこの問題に対処すべきだ。そしてマイナンバーカードの普及を促進するべきだ。

そもそもマイナンバーカード制度は、政府広報がいうように「すべての人の暮らしを便利にするためのカード」なのだから、もっとスピーディに効率よくシステムを構築し、運用できるように全力で取り組むべきだ。私共各自もその重要性を認識し、すぐ行動しなければならない。

このような常識が通用しないことは国力の低下、民度の低下を意味する。このような状況を放置していると、日本は世界から完全に取り残されてしまう。

現に恐ろしいことが起こっており、誠に残念でならない。